だって、面白えじゃん。
中毒になるよ。
ここ十年単位で、一番面白かったホラー映画かもしれない。
花々で充ち溢れたスウェーデンの美しい自然風景。
親切かつオープンな気質に見え、閉鎖的な土着信仰に従い生活する村民たち。
それに巻き込まれていく学生たちの一行。
狂気、狂気、狂気が次々と明るみになり、その結末は……
と、いったところか。
初見のざっくりとした感想としては「あ……これ、風景が美しいverの”ダンウィッチの怪”っすね」と思った。
言うまでもなく、ダンウィッチの怪は最初から暗い。
近親相姦、異常な土着信仰、外なる神の襲来等が起きようと、読者は”これはホラー小説である”と身構えた状態で話の流れを掴んでいく。
だから登場人物が次々と発狂していこうと、読者のSAN値は削られることはない。
しかしミッドサマーは”明るい”。
これが視覚的にもパニックを引き起こす。
自分たちもこの儀式に巻き込まれてしまっているのでは? という錯覚に陥り――
登場人物が次々と狂っていく中で、自分たちも一緒に発狂していくような追体験に駆り立てられる。
白昼夢と白夜の錯綜。
幻覚にも似た自我崩壊感。
事実、登場人物たちもドリンク状の幻覚剤を何度も飲まされている。幻覚的な描写やフラッシュバックを使用した表現も多々見られた。
そういう意味では「ブラックスワン」や「レクイエム・フォー・ドリーム」に準ずるドラッグ映画だとも言えるかもしれない。
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(ブラック・スワンも一種のドラッグ映画だ、って認識……あんまり無いよね。)
そして何よりも外せない要素としては”宗教性”だ。
そもそもミッドサマーという単語自体、”夏至祭”という祝祭のことを意味する。
村民たちの行う儀式や信仰上の戒律などは、先史時代の北欧民間信仰やドルイド教等を匂わせるものが多い。
どれもこれも考察していくと面白いのだが、それを紹介するには映画内のシーンを引用しないといけないので、”ネタバレ”になってしまう。
幸いにも公式ページが”映画を観た人限定”の解説ページをご用意してくれているので、それを参考にするといいと思う。
(URLも貼っておこうかと思ったが、サイト側が”未鑑賞の方にシェアするな”と念押ししてくるので止めておく。解説ページは”観て”から”見よう”ね)
ともかく、超A級のホラー映画だった。
最早定型文となっている”心臓の悪い方のご鑑賞はご遠慮下さい”と書いてもいいと思う。
後……これは一応言っておくが……
北欧特有の美しい森や草原、そして何よりも”花畑”を愛する人はガチで見ない方がいいかもな。
花畑や美しい自然を見るだけで、軽いフラッシュバックを引き起こすことになるぞ。
例えば、こういう画像。
ネットから拾ってきたただの花畑の画像だが――俺にはもう見えてくる。
あの村民たちが、今も夏至祭のポールの下で、
狂った儀式に耽っているのが。
俺の白夜は、まだ終わりそうにない。