お さ ら い
・私はバンコクのサパーンレックという電子機器類の闇市で、シャンティというゲームを購入した。
・当時の私は、バンコクのタワーマンションで親父殿と二人暮らしをしていた。
・親父殿は徹底的なゲーム禁止主義者で、ゲーム機器が見つかり次第破壊される状態だった。
これを頭に入れておいて欲しい(もしくは当該記事を読んでね)。
前回記事で書いたが、俺は“キッチンの換気口の裏側”に袋詰めにしたGBCとシャンティを隠していた。
そして親父殿がいない時にゲームを進めていた。つまり“仕事中の昼間”か“出張中”に限られる。親父殿は妙に几帳面なところがあり、何時に帰宅するかはメール等できっちり伝えてくる。
要はメールが来たらゲームを隠せばいい。その点は割とザルだった。
が、この“帰宅時間通知メール”は、毎回送ってくれるわけではない。
泥酔している時は送ってくれない。
調子に乗って夜遅くまでゲームを進めていると、鍵を開ける音が聞こえる。
やべえ。
予期しないタイミングで帰ってきやがった。
そういう時は、臨機応変に親父殿が”一番行きそうにない場所”に隠す。
どういう意味かというと、親父殿は泥酔していると部屋を異様に徘徊する癖があり、破壊し甲斐があるものを発見すると謎の人間の名前を叫びながら殴ったりぶっ壊したりする。俺は当時、これをデビルトリガーモード(元ネタはデビルメイクライ)と呼んでいた。その叫びは悪魔の慟哭のように、バンコクの夜を劈いたからだ。
良く出世できたな……親父……
この状態になると親父は手が付けられない。だからその日の酔い加減等から“一番行きそうにない場所”を瞬時に計算しGBC隠す必要があった。
一番有効的だったのは“ベランダの鉢植えの下”だ。親父殿には謎の習性があり、どれだけ泥酔して怒り散らしていても、植物や昆虫などの自然物への攻撃は絶対にしない。蚊は流石に潰すが、蜘蛛や蛾は外に逃がす。
そして鉢植えには花が咲いている。だから破壊しないのだ。
いや……それより息子を攻撃するなよ……お前……
ただし雨が降っていたらベランダに隠すわけにはいかない。GBCを雨ざらしにすれば回路が腐蝕してお陀仏、今までの努力も水の泡。一度あまりにも追い詰められてパンツのなかに隠したことがあったが、その時パンツからGBCを落とすという大ポカを犯した。
終わった、と思ったが――破壊は免れた。
何故かって?
泥酔しているから……これが“ゲーム機”だとわからなかったんじゃないですか……?
ともかくそんな日々を続けながら、どうにかこうにかシャンティを終盤まで進めた。
アクションゲームの多くは、最終面間近になると凄まじい能力の武器が貰えたり、主人公が大きくパワーアップしたりする。
シャンティの場合は、最後の変身を習得する。
それが、ハーピー。
このハーピー状態になると行動の自由度が格段に上がる。
今まで行けなかった場所とかも余裕で行けるようになる。なんつっても飛べるからな。
ともかくゲームクリアも目前。順当に行けば一、二時間もかからずクリアできるだろう。
しかし俺は、二時間経っても、三時間経ってもクリアしようとしなかった。
ゲームが下手で、ステージを進められないのか?
違う。
プロゲーマーではないが、自分はゲームはむしろ上手い方だと思う。
シャンティは難しいゲームではない。正直ヌルいぐらいだった。ゲームオーバーになった記憶すらない。
なのに、何故ゲームを進めなかったのか?
それはな……俺がな……このハーピー状態のシャンティに完全に欲情し、トイレのなかで下半身丸出しでゲームをプレイしていたからだよ。
リスキィ・ブーツの居場所を突き止めるという目的は一切合切放棄し、無意味に街中を飛んだりベリーダンスで変身を繰り返させたりして、劣情を猛烈に昂らせていった。
あぁ……シャンティ……いいぞ、いいぞ!!!!
よし、”事”に及ぶとするか。
だがGBCから手を放すとコマンド入力ができない(変身等の行動ができない)。
かといって、GBCを握っていると”愚”かな”息”子を握れない。
この背理的状況に俺は苦しんだ。
どうすればいい!?
そこからは猿以下の行動をしまくっていた。壁に”ソレ”を擦りつける、トイレットペーパーの芯に”アレ”を突っ込んだままゲームをプレイする、便座の開閉部に”ブツ”を挟んで腰を振る、等。
バンコクの高級タワマンのトイレで一体何をしているんだ、お前は。
人生のなかで、最もIQが低い行動をしていたのはあの瞬間かもしれない。
こんな訳のわからない自慰をしても達せられるわけがない。
果てる前に、賢者タイムが訪れた。
俺は……一体何をしている?
阿保か?
終盤までプレイしてきたんだ。一旦クリアしてから落ち着こう。
便座に座り直し、再度ゲームを進め始めた。
まあ、下半身は全裸のままだったんすけどね。
テントがギンギンに張ってしまって、キツかったんすよ。
だが……俺はあんな阿保な行為をしていたため、気づかなかった。
鍵が、開く音に。
親父殿の、ご帰還。
泥酔している人は、尿意を催している可能性が高い。
あの時の親父殿もそうだったのだろう。
あろうことか、俺はトイレの鍵を閉めるのを忘れていた。
ガチャ、と音がした。
片方は泥酔した父親。
片方は下半身丸出しでゲームをしている息子。
その二人の――目が合った。
俺は、悟った。
血眼とは、こういう目のことを言うのだろう。
親父も親父で、情報量が多過ぎて混乱していたような気がする。何せ泥酔状態で帰ってきて、さあ小便をしようと思ったら、下半身丸出しの息子が”息子”をギンギンにおっ勃てて、何故かゲームをしている。
一瞬の沈黙があった。
殴られるか、と思ったがそうではなかった。
親父は、俺が両手でしかと握っていたGBCをぶんどって、
ベランダに行き、思いっ切り外にぶん投げた。
……。
俺のシャンティは、隣のビルの屋上に落下した。
ガシャン、と軽く音がした気がした。
運河(サパーンレック)から来たりし精霊は、コンクリートに堕ちて死んだ。
親父はそれで満足したのか、何も言わず寝室に入って、寝た。
俺は下半身丸出しのまま、ベランダから隣のビルを見て立ち尽くしていた。
哀しみと放心で、それこそ自分を慰めることも出来ないまま、
寝室で、眠れぬ夜を明かした。
……何だろうか。
哀しいのか、阿保なのか、意味不明な記事になってしまった。
ひとつ言えるのは、親父は泥酔時にキレ過ぎだった、ということだ。
もうひとつ言えるのは、俺は……何をしとんのや。
綺麗に纏めたかったが、これだけ言いたい。
誰か……実機くれよ。
シャンティの……実機くれよ。
まだクリアしてねえんだよ、俺!!!!
ハーピー状態で遊び耽っていたせいで、エンディング見れてねえって!!!!
ああああああああ!!!!
俺のシャンティがああああああああ!!!!!!!!
嘆いても、仕方あるまい。
俺はズボンを脱ごう。
今や下半身真っ裸でも誰も咎める人はいない。
どっかのスパで股間を温めて、慰めに行こうぜ……
自分を……
※追記
もっと綺麗に纏めるつもりだったが、マジで良くわからん記事になってしまった。
そりゃそうだ。「バンコクのサパーンレックで“Shantae”というレトロ洋ゲーを購入してプレイした初めての日本人」という状況がまずもって良くわからん。
状況と情報が錯綜し、最終的に意味不明な結末を迎えた。
少なくとも、これだけは伝えられる。
シャンティは今も好きですよ。
5作品目買うかって? 当たり前じゃないですか。
ただ……こんなド下ネタにシャンティを付き合わせてしまい……
ウェイフォルワードさん……本当に、すみませんでした……
……。
俺のシャンティがああああああああ!!!!!!!!
シャンティ:ハーフ・ジーニー ヒーロー アルティメット・エディション - PS4
(最新作のリンクを貼りたかったが、Apple Arcadeの体験版しかなかった)